雀の子を、犬君(いぬき)が逃がしつる。伏籠(ふせご)の中に、籠めたりつるものを・・・
■現代語訳
若紫「雀の子を、いぬきが逃がしてしまったの。ちゃんとかごにいれておいたのに・・・」。
■鑑賞
春、瘧病(わらわやみ)にかかった源氏の君は、加持祈祷を受けるために、北山のお寺にお出かけになりました。
そこで、藤壺の宮にうり二つの美少女を垣間見ました。
最愛の妻となる、若紫の姫君(紫の上)との出会いです。
姫君には、兵部卿という父君がおありなのですが、母君を亡くしてからは、継母の北の方から疎まれ、
お祖母様の尼君の許でさびしく暮らしていたのです。
源氏の君は、若紫の姫君が、藤壺の宮の姪であることを知ると、自分の側において、理想の女性としてお育てになりたいと考え始めます。
北山の尼君が亡くなり、父君の兵部卿が、姫君を引き取ろうとすると、すでに源氏の君が強引に連れ去った後でした。
その一方で、源氏の君は藤壺の宮と夢のような逢瀬を持ちます。
「このまま夢のなかへ消えてしまいたい―――」
そして、この許されぬ恋のはてに、藤壺の宮は不義の子を身籠ってしまいます。