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【61】うわさの女・女のうわさ


今回は女の職場の裏側を見てみます。



◆昔も変わらぬ女心


女子におしゃれは誰のためにしていますかと尋ねると、
たいてい自分のためという答えが返ってくるそうです。
誰の視線を意識していますかという問いには、
同性の視線という答えがほとんどだとか。

自分の「きれい」「かわいい」をキープしたい、
女性から誉められたり羨ましがられたりする存在でありたい。
そんな願望が、飽くことのないおしゃれへの
原動力になっているようです。

『紫式部日記』や『枕草子』を見ると、
平安時代の貴族女性がおしゃれに熱心だった理由が
今とほとんど変わらないことがわかります。


行幸は辰の時と まだ曉より人々化粧(けそう)じ 心づかひす
(紫式部日記)


行幸(みゆき)は朝8時というので
まだ夜の明ける前から女房たちは化粧して心配りをする

親王が誕生し、藤原道長邸を一条天皇が訪問するという場面です。
まだ暗いうちから女たちの化粧が始まっているのは、
天皇来訪というめったにない大イベントに参加できる喜びと
いかに立派に美しく振舞えるかという緊張感のため。
そして何より、白粉(おしろい)の厚塗りに時間がかかったため。

下手な化粧やセンスの悪い着こなしは避けなければなりません。
厚化粧がはがれたりしたら物笑いの種、
悪いうわさはどこまで広がっていくかわからないのです。
できればあの人は素敵だったと、よいうわさを流されたい。

おしゃれの真剣勝負、なんていうと大げさに感じますが、
同性の評価が心配で真剣にならざるを得なかったのです。


◆目立つ女は叩かれる


あの人はおしゃれ、というのは賞賛の言葉ですが、
あの人はインテリ、というのは非難の言葉でした。

『源氏物語』の読者の一人だった一条天皇が、
作者は日本紀を読んだ学識ゆたかな人物にちがいないと賞賛しました。
それを聞きつけた左衛門の内侍(ないし)という女房は
紫式部に「日本紀の御局(みつぼね)」というあだ名をつけ、
才能をひけらかす女だと言いふらしてしまいました。

漢文の才能がある女など鼻持ちならない
というのは、当時の一般的な風潮でした。
式部は漢文の本を人に見つからないように隠し、
漢字の読み書きもできないふりをして
うわさの打ち消しをはかりました。

漢文に限らず、当時はあまり博識だったり才気煥発だったりすると、
女房たちの間では嫌われてしまう危険がありました。
賢さを隠そうとしなかった清少納言は、
身に覚えのないうわさをたてられて
引きこもりになっていたことがあります。

紫式部はおっとりした女性を装うことでやり過ごし、
波風を立てずに宮仕えをこなしていったようです。

『源氏物語』には華やかで楽しげな女房たちが描かれています。
実際に宮仕えならではの華やかさ、楽しさを体験できたのですが、
その裏側で女房たちはこういう気苦労に耐えていたのです。