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源氏物語【47】心の鬼

【47】心の鬼


今回は紫式部の考える物の怪について見てみましょう。



◆君が心の闇なれば


紫式部はある日、侍女かだれかといっしょに
恐ろしい絵を見ていました。
それは物の怪(け)につかれた醜い女。
女の背後には鬼になった元の妻が描かれていて、
法師に縛られ、法力によって責められています。

これはいわゆる「後妻(うわなり)打ち」というもの。
前妻が後妻に嫉妬していじめることをいい、
謡曲『葵上』には「あさましや、六条の御息所ほどのおん身にて
うわなり打ちの御ふるまひ」と出てきます。

物の怪につかれた女と物の怪の正体が描かれたその絵を見て、
紫式部はこういう歌を詠みました。


亡き人にかごとをかけてわづらふも おのが心の鬼にやはあらぬ
(紫式部集)


後妻に物の怪がついたのを亡くなった人(=前妻)のせいにして
あれこれ悩むというのは 自分(=夫)の心が鬼だからでしょう

侍女の返し。


ことわりや君が心の闇なれば 鬼の影とはしるく見ゆらむ
(紫式部集)


そのとおりと思います
今はあなたの心が闇ですから 絵の中の鬼が
心が生んだ鬼の姿だとはっきりおわかりなのでしょう

式部の身の上に何があったのかわかりませんが、
夫宣孝(のぶたか)を亡くした直後だったかも知れません。
結婚生活わずか3年で宣孝は疫病に倒れ、
幼い一人娘を遺して帰らぬ人となっていました。


◆心が見せる物の怪の姿


「疑心暗鬼を生ず」というのは、
疑う心があると、いるはずのない鬼が暗闇の中に見えてしまう、
たとえば薄(すすき)の穂も幽霊に見えてしまうことをいいます。

葵の上にとりついた御息所の声が
夫である光源氏にしか聞えなかったことを思うと、
正妻をおろそかにしていた源氏のやましさが
御息所の生霊(いきすだま)を見せたのだとも考えられます。

この時代は風邪や腹痛以外の重い病や精神疾患などは
物の怪のしわざと信じられていました。
出産にともなう苦痛も、激しければ物の怪を疑ったのです。

式部は源氏の深層心理を物の怪を通して描いたのでしょうか。
ほんとうは物の怪など存在しないとわかっていたのでしょうか。

そこまで考えるのは深読みすぎるかも知れませんが、
少なくとも式部は
当時の一般的な認識よりは覚めていた人のように思えます。