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源氏物語【36】西鶴と源氏物語

【36】西鶴と源氏物語


今回は源氏物語と西鶴の作品との関係を見ていきます。



◆好色一代男は庶民の源氏


井原西鶴(1642-1693)の処女小説にして大ヒット作『好色一代男』は、
浮世草子(うきよぞうし)と呼ばれる小説分野の
さきがけとして有名です。

主人公世之介(よのすけ)の好色遍歴を描くこの小説は
全8巻54章からなり、明らかに源氏54帖を意識しています。
文中に『源氏物語』『伊勢物語』のパロディが顏を出すこともあり、
光源氏や在原業平のような貴族の「好色」ではない、
一介の町人の「好色」が次々と展開されていきます。

世之介を軸に描かれるさまざまなエピソードは
当時の「すき者」が見せる好色カタログといったところ。
ということは、西鶴は『源氏物語』を
平安時代の男女関係のカタログと見ていたのではないか。
そんな気がしてきます。

◇源氏に襲われて不義の子を産み
罪に悩みつづける継母藤壺(ふじつぼ)

◇正妻ではあるけれど源氏に心を許しきれず
夫の浮気相手 六条御息所の生霊のたたりで死んでしまう葵の上

◇分別もつかない少女のうちに拉致されて源氏の妻となり
浮気性の夫に生涯悩まされつづける紫の上

◇源氏のきまぐれから愛人となる
没落皇族の娘 末摘花(すえつむはな)

◇源氏の誘惑にのった好色な老女内侍(ないしのすけ)

◇須磨に流された源氏の現地妻となり
正妻に次ぐ待遇をうけることになる明石の君

◇幼さが抜けないまま源氏に降嫁し
不義の子を産んでしまう皇女 女三の宮

…などなど。こうして並べてみると、
『源氏物語』のほんとうの主役は
女たちだったのではないかと思えてきます。
紫式部は光源氏を狂言回しにして、
さまざまな女の生きかたを描いてみせたのではないかと。


◆女の職業カタログ


西鶴の好色シリーズには『好色一代女』もあり、
こちらは職業カタログと考えることができるでしょう。

老女が若者に自分の生涯を語るというかたちで、
老女が経験したさまざまな職業が紹介されていきます。
その数なんと20種以上。

ひとりの女性の職歴としては不自然で無理があるものの、
当時の女性の職業がどのようなものだったか、
現代のわたしたちにもよくわかります。

奉公人、踊り子、髪結い、腰元や小唄の師匠もありますが、
ほとんどが禿(かむろ-=遊女の見習い)や遊女、
大名の側室などアチラ系の職業。
それが実情だったのでしょうか。

『源氏物語』が「私」の場の貴族女性を描いたのに対し、
西鶴は「公」の場の庶民女性を描いています。

文化の担い手が貴族から武士を経て庶民に移ったのが江戸時代で、
西鶴が活躍した元禄期はその最初のピークでした。
それを考えると、西鶴は『源氏物語』をヒントに
新しい時代の女の姿をこの作品に留めようとしたのだと思われます。