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源氏物語【19】引用の宝庫〈前〉

【19】引用の宝庫〈前〉


紫式部 発想の源泉〈前〉


今回は源氏物語に見られる引用について。


◆心は闇にあらねども

『源氏物語』には和歌や漢詩、催馬楽(さいばら)などの一節が
さりげなく引用され、効果を挙げています。

和歌の引用は「引歌(ひきうた)」と呼ばれ、
紫式部がとくに多く用いた技法です。

古今のさまざまな和歌が引用されていますが、
中でも引用回数の多いのがこの歌です。


人の親の心は闇にあらねども 子を思ふ道にまどひぬるかな
(後撰集 雑 藤原兼輔)
子をもつ親の心は闇というわけではないが
子どものこととなると道に迷うかのように惑ってしまうことだ


紫式部の曾祖父(ひいおじいさん)にあたる兼輔(かねすけ)の歌です。
兼輔は著名な歌人で、この一首は代表作のひとつとして
知らない人はいないほど有名でした。

「桐壺」の巻にある命婦(みょうぶ)の言葉
「闇に暮れて」をはじめとして、少なくとも10回は引かれています。

歌の全体が引用されることはないので見落としがちですが…。


◆清少納言の父親も引用?

「朝顔」の巻には雪の夜、二条院の庭で
童女に雪まろばし(雪の玉を転がして大きくする遊び)をさせて楽しむ
かわいらしい場面が描かれています。

その直前にある光源氏の言葉を見てみましょう。


時々につけても人の心を移すめる花紅葉のさかりよりも
冬の夜の澄める月に雪の光りあひたる空こそ
あやしう色なきものの身にしみて
この世のほかのことまで思ひ流され
おもしろさもあはれさも残らぬ折なれ
すさまじき例に言ひ置きけむ人の心浅さよ

とて御簾巻き上げさせたまふ

折々につけても 人が心惹かれるという花や紅葉の盛りよりも
冬の夜の澄んだ月に雪が光り映える空こそ
不思議に色のない光景が身にしみて
この世の外のことまで思いやられ
おもしろさもあわれさも残りなく感じられる時節だ
つまらぬものの例に挙げていた人の心の浅いことよ

と言って御簾(みす)を巻き上げさせなさる


源氏のいう「花紅葉のさかりよりも…」は
清原元輔(きよはらのもとすけ)の和歌を意識したものです。


いざかくてをりあかしてむ冬の月 春の花にもおとらざりけり
(拾遺集 雑秋 元輔)

さあこうやってここで夜を明かそう
冬の月が春の花にも劣らず素晴らしいから


元輔は清少納言の父親で、たいへん優れた歌人でした。
紫式部は元輔を引き合いに出しておいて
娘の清少納言への強烈な皮肉に転じます。

さてその皮肉とは…。