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源氏物語【17】方角の禁忌〈前〉

【17】方角の禁忌〈前〉


今回は平安時代の方角意識について。



◆関白さまも恵方詣

ここ数年、恵方巻が全国に広まってきたようです。
恵方は「吉方」とも「兄方」とも書き、
陰陽道(おんみょうどう)からきた考え方。
その年の福徳をつかさどる神のいる方角、
わかりやすくいえば縁起のよい方角のことです。


藤原道長の日記『御堂関白記(みどうかんぱくき)』に
恵方にある寺院に参詣したという記事があり、
古くから恵方詣(えほうもうで)の習慣があったことがわかります。
時の最高権力者でも方角は気になったのですね。

お正月の初詣は恵方詣がもとになっているといい、
昔は自宅から恵方の方角にある社寺にお参りしていたそうです。


平安時代に太巻きはまだありませんでした。
恵方巻は江戸時代末期から明治にかけて、
上方で商売繁盛の祈願として発案されたともいわれ、
それほど古いものではないようです。


◆清少納言の方たがえ

今でも方角を気にする人はいますが、
平安貴族にとっては生活を左右するほど大切なものでした。

「よい方角(吉)」があるということは
「悪い方角(凶)」もあるわけです。
目的地の方角にぐあいの悪い神がいたら災いを受けると信じられており、
うかつに出かけられませんでした。


『源氏物語』の「手習」には
「なかがみふたがりて例すみ給ふ方は忌むべかりければ」とあり、
いつも住んでいるところでさえ、天一神(なかがみ)が
ふさいでいると避けなければならなかったようです。

そこで行われていたのが「方(かた)たがえ」。
まず自宅から「凶」でないに方角のところに行って一泊し、
翌朝あらためて目的地に向かうのです。
出発点がちがうので、目的地は「凶」の方角ではなくなります。

他人の家に泊めてもらうのですが、
一泊では済まず何日も滞在することがあったらしく、
迎える側はたいへんでした。

清少納言は『枕草子』の「すさまじきもの」の段にこう書いています。


方たがへにいきたるにあるじせぬ所
まいて節分などはいとすさまじ


方たがえのために泊めてもらった家が
「あるじせぬ」(もてなさない)のを
「すさまじ」(あきれる・おもしろくない)というのです。
まして節分のときなどはたいへんあきれてしまうと。
方たがえに訪れた人をもてなすのが、当然の礼儀だったのでしょう。

同じ『枕草子』の中に「節分違(せちぶんたがえ)」という言葉もあり、
節分の日に方たがえするのか習慣だったことがわかります。
調べてみると立春の前日、方位の神さまが移動するのだそうです。

今では豆まきの日になっていますが、
平安時代の京都では貴族大移動の日だったのかも。


さて、方たがえではよその家に泊まるわけですから、
予期せぬ出逢いも生まれました。
光源氏と空蝉との出逢いもそう。
『源氏物語』を彩る華やかな恋愛遍歴の、最初の一ページです。