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源氏物語【13】王朝の舶来品〈前〉

【13】王朝の舶来品


ブランド志向の貴族たち〈前〉

今回は貴族生活を彩る舶来品のお話です。


◆貴族はブランドものがお好き

柏木は「若菜下」で、女三の宮の猫を奪おうと画策します。
東宮を介して手に入れようと考えた柏木は
猫好きの東宮の興味を引くために
女三の宮がかわいい唐猫を飼っていると告げます。



唐猫の ここのに違へるさましてなむはべりし
同じやうなるものなれど 心をかしく人馴れたるは
あやしくなつかしきものになむはべる
唐猫(からねこ)で、ここの猫とはちがう様子をしておりました
どれも同じようなものですが、性質がよくて人に馴れているのは
不思議とかわいらしいものでございます


唐猫は中国から渡来したもの。
日本の猫とは顔つき、身体つきがちがっていたといいます。


平安貴族の生活には唐衣(からぎぬ)、唐櫛笥(からくしげ)、
唐車(からぐるま)など、「唐」の字のつくものがよく出てきます。
これらは中国からもたらされたものや中国風のものを示し、
唐物(からもの)は今でいう海外ブランドのようなものでした。



◆唐物の威力

「花宴(はなのえん)」で、
右大臣邸の藤花の宴に招かれた光源氏は
わざと遅刻していきます。

たくみな作戦だったのでしょう。
皆が源氏の君は今か今かと待っているところへ
こんな姿で登場します。



桜の唐の綺(き)の御直衣
葡萄染の下襲 裾いと長く引きて
桜襲(さくらがさね)の唐織(からおり)の直衣(のうし)
葡萄染(えびぞめ)の下襲(したがさね)に裾をとても長く引いて


ほかの人はみな袍(ほう)を着ているところへ、
なんとも華やかないでたちです。
唐物の中でもとくに貴重品だった「綺」を身に着けることで
源氏は富と栄華をアピールしたのです。



「若菜上」では、女三の宮を源氏のもとに降嫁させるとき、
朱雀院は娘のために華麗な唐風の調度を揃えさせます。



ここの綾 錦は混ぜさせたまはず
唐土(もろこし)の后の飾りを思しやりて…
この国の綾や錦は入れさせなさらず
唐の皇后の飾りを想像して…


どうだまいったかという嫁入り道具だったようです。
源氏も明石の君のために唐風の調度をしつらえますが、
豊かさや身分の高さを示すために、
無理をしてでも舶来品を使う風潮があったのです。