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  源氏物語メールマガジン >> 【26】物の怪の恐怖

  【26】物の怪の恐怖
 


     今回は平安朝の人々を恐れさせたもののけについて。

──────────────────────────────────
◆平安のエクソシスト
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キリスト教社会では今でもエクソシストがいます。
ということは今でも悪魔がいるわけで、
21世紀の現代でも悪魔祓いの需要があるのです。

平安時代の日本では、僧侶がその役目を担っていました。
ただ追い払うのは悪魔ではなくて物の怪(もののけ)。
人間に危害を及ぼす邪悪な霊魂をいい、
治療困難な病気や精神の病(やまい)は
物の怪のせいだと考えられていたのです。


物の怪を追い出す儀式を調伏(ちょうぶく)といいます。

霊験あらたかな高僧が呼ばれ、
物の怪を乗り移らせるよりましという人(多くの場合子供)を
患者のそばに座らせておきます。
祈祷によって追い出された物の怪は
よりましの身体に移り、その口を借りて語るのです。

物の怪の正体がわかったところで、
僧は呪文によってそれを人間界の外へと追い払います。


──────────────────────────────────
◆六条の御息所の生霊
──────────────────────────────────
賀茂祭の後、出産をひかえた葵の上の症状が悪化します。
調伏の祈祷でいくつかの物の怪が追い出されて
次々とよりましに移りましたが、
どうしても離れようとしない物の怪がひとつありました。

葵の上を見舞った源氏は、
苦しいから祈祷を止めて欲しいと頼むその声が
葵の上のものではないのに気づきます。


───────────────────────────────
いであらずや 身の上のいと苦しきを
しばし休め給へと聞えむとてなむ
かく参り来むともさらに思はぬを
物思ふ人の魂はげにあくがるるものになむありける
───────────────────────────────
そうではありません 身体がとても苦しいので
ご祈祷をしばらく止めてくださいと申しあげようと思ったのです
このように(生霊となって)参ろうとは思いもしませんのに
悩む人の魂はほんとうに身体を離れてしまうものなのですね


それは六条の御息所の声でした。
葵の上にとり憑いて悩ませていたのは
御息所の生霊(いきすだま)だったのです。

人の霊魂は生きているときでも身体を抜け出すと、
当時の人々は信じていました。
御息所の嫉妬する魂は車争い(前話参照)でさらに深く傷つき、
遊離してしまうようになっていました。


哀れなのは御息所本人がそれを自覚していたこと。
魂が遊離する夢を見ただけでなく、
御息所の衣や髪の毛には芥子の香が沁みついていました。
それは物の怪の調伏のために焚かれたものだったのです。

嫉妬の上に自己嫌悪まで背負い込んだ御息所は
どれほどつらかったことでしょう。


葵の上は息子(のちの夕霧)を産んで亡くなります。
御息所は源氏との関係を絶つため、
娘の斎宮とともに伊勢に下ることにしますが、
源氏は未練がましく御息所を思いつづけます。

 


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