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白描 源氏物語

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【第九帖】葵(あおい)

【第九帖】葵(あおい) 

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「嘆きわび空に乱るるわが魂を 結びとどめよ したがひのつま」と、のたまふ声・けはひ その人にもあらず、変はりたまへり。  
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ ■□■ 現代語訳 ■□■  
「嘆き苦しんで、空にさまよう私の魂をつなぎとめてください。 下前(したがい)の褄(つま)を結んで」という声もしぐさも、 葵の上ではなく、別人のようでした。  
■□■ 鑑賞 ■□■
葵祭の御禊(ごけい)の御行列に、源氏の君もお供することになり、 ご懐妊中の葵の上も、その晴れ姿を見物にお出かけになりました。 葵の上の従者たちは、人目を忍ぶ六条御息所(ろくじょうのみやすどころ) 一行と見物の場所をめぐって車争いになり、乱暴の限りを尽くします。 「こんな未練がましい、惨めな姿を見られてしまうなんて・・」 この車争いの一件以来、御息所(みやすどころ)は屈辱感に人知れず 物思いを深めていきました。 一方、出産を控えた葵の上は、物の怪に苦しめられ、お命さえ
危ぶまれます。ある時、病床から不意に源氏の君に懐かしげに 語りかけてきたその声やしぐさは、葵の上ではなく、御息所とうり 二つでした。源氏の君は物の怪の正体が御息所の生霊(いきすだま) と知り、衝撃を受けます。 葵の上は若君(夕霧)をお産みになると、すぐに亡くなってしまいます。 ご懐妊を機に、葵の上との心の隔てもなくなり、 ようやく夫婦らしい愛情も芽生えたというのに・・。 源氏の君はその死を悼み嘆きます。 喪が明けた源氏の君は、すっかり大人びた紫の姫君と新枕を交わすの ですが、お兄様のようにお慕い申しあげたのに、と姫君は裏切られた 思いです。